パワー半導体とは、電力の制御や変換を行うための半導体デバイスの総称です。
高い電圧や大きな電流を扱うことができる特性を持ちます。
ダイオードやスイッチングデバイスなどがあります。
スイッチングデバイスには、IGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)やMOSFET(金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ)などがあります。
電気自動車や鉄道車両、太陽光発電などの分野で広く使われています。
パワー半導体の種類
- ガリウム窒化物(GaN)パワー半導体:シリコンよりも高い耐圧性と高い電子移動度を持つ材料で、パワー半導体として注目されています。
高効率で高周波のスイッチングが可能であり、電力変換や通信などの分野で使われています 。 - ダイヤモンドパワー半導体:ガリウム窒化物よりもさらに高い耐圧性と高い電子移動度を持つ材料で、パワー半導体として期待されています。
超高効率で超高周波のスイッチングが可能であり、宇宙や核融合などの極限環境に適した分野で使われる可能性があります 。 - パワーモジュール:パワー半導体デバイスとその周辺部品を一つの筐体に集積した製品です。
高性能で小型化できる利点があり、自動車や鉄道車両などの分野で使われています 。
パワー半導体の用途
- 直流の電気を交流に変換するインバータ
電気自動車(EV)では、バッテリーから出力される直流の電気をインバータで交流に変換し、モーターを駆動させます。また、充電時にはコンバータで外部から供給される交流の電気を直流に変換し、バッテリーに蓄えます。 - 交流の電気を直流に変換するコンバータ
電車では、架線から供給される交流の電気をコンバータで直流に変換し、インバータで再び交流に変換して周波数を調整し、モーターを駆動させます。また、ブレーキ時にはモーターが発電機として働き、発生した交流の電気をインバータで直流に変換し、回生ブレーキとして利用します。 - 交流の周波数を変換するAC/ACコンバータ
5Gの基地局では、高速・高周波・高出力の通信信号を送受信するために、パワー半導体が重要な役割を果たします。特にSiC(炭化ケイ素)やGaN(窒化ガリウム)などのワイドギャップ半導体は、高温・高周波・高効率で動作できるため、5G基地局向けのパワー半導体として注目されています。
産業機器では、溶接機や切断機などの高周波加工機や、ロボットやエレベータなどの駆動制御機器などにパワー半導体が使用されています。これらの機器では、高精度・高効率・高信頼性が求められるため、パワー半導体の性能が重要です。 - 直流の電圧を変換するDC/DCコンバータやレギュレータ
太陽光発電では、太陽光パネルから発生した直流の電気をインバータで交流に変換し、送電網に送ります。また、DC/DCコンバータやレギュレータで電圧を調整し、発電効率を最適化します。これらの電力変換には、高効率・低損失・高耐久性のパワー半導体が必要です。
パワー半導体を製造する会社
- 世界的にはドイツのインフィニオンテクノロジーズやアメリカのオンセミコンダクター、スイスのSTマイクロエレクトロニクスなどが上位にランクインしています。これらの会社は、高性能で低損失なパワー半導体を提供しており、自動車や産業機器、太陽光発電などの分野で需要が高まっています。
- 日本では、三菱電機や富士電機、東芝、ルネサスエレクトロニクス、ロームなどが有力なパワー半導体メーカーとして知られています。これらの会社は、国内外の市場で高いシェアを獲得しており、特にSiC(炭化ケイ素)やGaN(窒化ガリウム)などの次世代パワー半導体の開発に力を入れています。SiCやGaNは、従来のシリコンよりも高耐圧かつ低損失で動作できるため、省エネ・省電力・環境対策などの社会的な課題に貢献できます。
パワー半導体の製品
- パワーモジュール:パワーダイオードやパワートランジスタなどを一つのパッケージにまとめたもので、高耐圧・高出力・高効率な電力変換を実現します。インバータやコンバータなどの電力変換器に使用されます。
- パワーディスクリート:パワーダイオードやパワートランジスタなどを個別に提供するもので、小型・軽量・低コストな電力制御を実現します。スイッチング電源やLED照明などに使用されます。
- 電源制御用IC:パワーディスクリートを制御するための回路を集積したもので、簡単・安定・高性能な電源制御を実現します。PCやサーバ、TVなどに使用されます。
- 圧力センサ:圧力を電気信号に変換するもので、高精度・高信頼性・高耐久性な圧力測定を実現します。自動車や医療機器などに使用されます。
これからのパワー半導体
パワー半導体市場は2030年には4兆円超えの規模に成長すると予測されています。特にSiCやGaNなどの次世代パワー半導体は、高耐圧かつ低損失で動作できるため、省エネ・省電力・環境対策などの社会的な課題に貢献できます。
パワー半導体の主な用途としては、自動車や電車、太陽光発電やデータセンターなどがあります。これらの分野では、高い電力変換効率や高速充電などのニーズが高まっており、パワー半導体の需要が増加しています。
パワー半導体の技術革新としては、ウェハ生産能力の増強や大口径化、加工技術の向上などによる低価格化や品質向上が進んでいます。また、酸化ガリウムやダイヤモンドなどの新しい素材の開発や実用化も期待されています。